夏の暑さもあとわずかですね。
お盆の時期は、いわゆる「地獄の窯の蓋があく」タイミングなので、魑魅魍魎やら成仏できていない幽霊さんたちがそこら中にウヨウヨ。
子供のころから、肉体を持たぬ存在が時々見える系の私にとっては、怖い季節なんです。
その季節も過ぎたので、安心して書かせていただきますね。
幽霊さんのお話を。
もう何年も昔のこと。
沖縄出張に行ったついでに、観光バスに乗って1日観光いたしました。
観光ルートにある「ひめゆりの塔」。
皆様ご存知ですよね、若き女学生たちの悲劇のお話を。
その入り口に着いたとたん、「ぅわっ、ここダメだわ…」と異様な気配を感じる私。
ガイドさんに「すみません、ここは入りたくないので、バスに戻りたいんですが?」と言っても、「バスはあちら側で待っているので、一緒にお進みください」と言われて、背筋が凍り付きました。
入り口を入る時からずうっと、「南無妙法蓮華経」を小さく唱えながら進みます。
あ、ウチの父方親戚はみんな日蓮宗のお寺さんですから。
「どうぞ、私にはくっついてこないでね、私を頼られても、何のお役にも立てませんからねぇ」
アタマの中では、そんなことを強く念じるわけです。
そして、何事もなく無事に東京に戻り、帰宅いたしました。
その晩、深夜のこと。
強烈なのどの渇きのあまりに、起きてみると全身汗びっしょり。
むちゃくちゃなダルさ。
ただ事ではないと思って体温計を探して計ってみると、水銀柱は42.0℃を超えている。
「うひょーっ、体温計振り切ってるぞー!」
尋常でない高熱は、人をアホにいたします。
そのまま朝までガマンし、朝一でフラフラしながら、這いずるようにして近所の内科医のところへ。
とはいえ、ドクターに「ひめゆりの塔で、幽霊がくっついてきた」と言って信じてもらえるでしょうか?
原因不明の発熱は、「疲れたんでしょうねぇ、とにかく解熱剤を処方しましょう」ということで、もらったのが座薬。
死にそうにフラフラして自宅に戻り、もらった座薬を使おうと手に乗せると、瞬く間に掌の上で溶けていく…。これじゃぁ使えない、えぇ~ん(涙)
その時に、もうろうとするアタマで考えました。
「そうか、薬ではダメなのね。くっついてきた幽霊さんと話し合わねば」。
それからしばらく、姿が見えぬ存在に向かって、ひたすら想念を送り続けます。
「そうか、のどが渇いて、熱くて、苦しくて、怖かったんだねぇ」
「こんな怖い目に合って。でも、日本国のために頑張ったんだねぇ。偉いねぇ」
「うん、アナタの気持ち、ちょっとだけわかった気がするよ。
アナタたちのことを日本人が忘れることがないように、後世に語り継ぐからね」
「…だから、そろそろ私から離れてくれませんかねぇ…」
かれこれ、発熱を感じてから2日間ほどたったころ、すぅっと身体から何かが抜けていくのを感じました。
「あぁ、やっと離れてくれたー!ヤッホー!」
…というのが、私の身に起きたことのすべてでございます。
思い出しましたよ。
「後世に語り継ぐからね」と約束したにもかかわらず、この実話をあんまり口に出してきませんでした。
だから、彼女たちとの約束を果たすために、ここに記しました。
皆さん、読みましたね?
そして、どうぞ彼女たちのことに思いを馳せてあげてくださいませ。
私たちの今の生活は、過去に国の繁栄のために犠牲になった人たちのおかげなのだということを、時々思い出していただけると嬉しいです。
南無妙法蓮華経。
夏の終わりの、ちょっと怖いお話でございました。
(つづく)…かなぁ?